地震に強い木造住宅のポイント(2)
前回の続きで地震に強い木造住宅のポイント、その(2)です。
今回はホールダウン金物について、なるべくホールダウンの数を少なくするには、という点を述べます。
今回はホールダウン金物について、なるべくホールダウンの数を少なくするには、という点を述べます。
ホールダウン金物を少なくするには?
今から約15年前の阪神の地震以後、木造の耐震設計法は改訂され、いわゆるホールダウン(以下HD)などの金物の検討をしなければならなくなりました。
HDは地震時に耐力壁の脚部が引き抜けないように、下記の梁またはRC基礎へ接合する金物です。
上記は一般的にはN値法などにより計算します。
HDは 引き抜き力を以下で計算します(大まかな表現)
T=NL-NE
T:引き抜き力
NL:柱の長期軸力
NE:柱の地震時軸力
ホールダウンが多いと、柱などに欠損をさせることとなりますから、出来れば少ない方がいいと言えます。
しかしホールダウンを減らすとなると、逆に危ないんでは?と思うかもしれません。
これは耐力壁の配置を工夫することで可能になります。
ホールダウンは引き抜き力Tが大きいほど、大きな金物が必要ですから、ホールダウンを少なくするには引き抜き力が小さくなるような工夫をするということになります。
前述の式より分かるように、引き抜き力を小さくするには次のいずれかとなります。
1.NL:柱の長期軸力を大きくする
2.NE:柱の地震時軸力を小さくする
1.NL:柱の長期軸力を大きくする方法
柱の軸力を大きくすると言っても、別に柱に追加の重しをするわけではありません。
軸力が大きい柱を選ぶということです。
一般に建物の隅柱より中柱のほうが柱の軸力は大きいですから、耐力壁を建物内側に配置したほうが引き抜き力Tは小さくなると言えます。
隅柱とは建物のコーナー位置にある柱のこと、中柱とはそれ以外です。

上図は建物の軸組図:フレーム図です。
A,Bはそれぞれ隅柱、中柱の荷重の負担範囲を示します。
隅柱の方が中柱よりも負担範囲が狭いですから、その結果、負担の軸力も隅柱の方が小さく、逆に中柱は大きくなります。
よって引き抜き力を小さくするには、耐力壁を中柱に接するように設ける、つまり建物の外側よりも内側、内部の方に設ける方がいい、と言えます。
下図でAよりはB,Cの方が望ましいと言うことです。

また、安全を確認した上で、柱の数を少なくするのもひとつの方法です。
柱が少なければ1本の柱に作用している軸力は大きくなりますから、結果として引き抜き力は小さくなります。
パリのエッフェル塔は脚が4本しかないですよね?
これは脚の数を最低限にして各脚に働く力を最大化させ、風圧による転倒力:柱の引き抜きに耐えているのです。
もし脚が6本や8本あったら、隅柱に作用する常時軸力は減ってしまい、すぐ引き抜かれてしまいます。
これは真ん中に柱があることでせっかく有効に使えるはずの軸力を、ムダに捨ててしまっていることになるからです。
右図でWは建物(塔)の重量、Mは風圧による転倒力(転倒モーメント)です。
エッフェル等は脚が4本ですが、簡単のため2本とすると(左図)各脚に働く力は半分ずつ、W/2です。
しかしもし、右図のように真ん中に脚があった場合、先ほどの中柱のように負担範囲が大きいですから、真ん中の脚には約W/2の力がかかり、はしっこの脚に働く重量はW/4。先ほどの半分です。
よって脚が2本の場合の半分の風圧力で端っこの柱は引き抜かれてしまいます。
中央の柱への重量:W/2がムダに捨てていることとなっているのです。
このことから、鉄塔などのタワーを計画する時、脚の数を最低限にするのはいわば鉄則です。
電線の送電塔などはたいてい4本ですよね。
力学上、立体的に安定するのに必要な脚の最低本数は3本です。
これを平面的に120度(=ベンツマークのように)配置するのが最も効果的です。

カメラの「三脚」はまさに文字通り、脚は3本ですよね。
このような3本脚構造をtripod:トライポッドと言います
(三脚の英訳もトライポッド。)
上記のように3本の時が最もムダがないですが、実際は、建物や塔は90°のX-Y軸で設計されることが多いので脚は4本となっています。
話は戻りますが、柱を減らす、抜くとなるとちょっとビビッてしまうかもしれません。
まあこの場合は構造設計者にアドバイスを頂くなどしたほうがいいかもしれません。
次回もホールダウンの数を減らすには、という点「NEを小さくするには?」を述べます。
今から約15年前の阪神の地震以後、木造の耐震設計法は改訂され、いわゆるホールダウン(以下HD)などの金物の検討をしなければならなくなりました。
HDは地震時に耐力壁の脚部が引き抜けないように、下記の梁またはRC基礎へ接合する金物です。
上記は一般的にはN値法などにより計算します。
HDは 引き抜き力を以下で計算します(大まかな表現)
T=NL-NE
T:引き抜き力
NL:柱の長期軸力
NE:柱の地震時軸力
ホールダウンが多いと、柱などに欠損をさせることとなりますから、出来れば少ない方がいいと言えます。
しかしホールダウンを減らすとなると、逆に危ないんでは?と思うかもしれません。
これは耐力壁の配置を工夫することで可能になります。
ホールダウンは引き抜き力Tが大きいほど、大きな金物が必要ですから、ホールダウンを少なくするには引き抜き力が小さくなるような工夫をするということになります。
前述の式より分かるように、引き抜き力を小さくするには次のいずれかとなります。
1.NL:柱の長期軸力を大きくする
2.NE:柱の地震時軸力を小さくする
1.NL:柱の長期軸力を大きくする方法
柱の軸力を大きくすると言っても、別に柱に追加の重しをするわけではありません。
軸力が大きい柱を選ぶということです。
一般に建物の隅柱より中柱のほうが柱の軸力は大きいですから、耐力壁を建物内側に配置したほうが引き抜き力Tは小さくなると言えます。
隅柱とは建物のコーナー位置にある柱のこと、中柱とはそれ以外です。

上図は建物の軸組図:フレーム図です。
A,Bはそれぞれ隅柱、中柱の荷重の負担範囲を示します。
隅柱の方が中柱よりも負担範囲が狭いですから、その結果、負担の軸力も隅柱の方が小さく、逆に中柱は大きくなります。
よって引き抜き力を小さくするには、耐力壁を中柱に接するように設ける、つまり建物の外側よりも内側、内部の方に設ける方がいい、と言えます。
下図でAよりはB,Cの方が望ましいと言うことです。

また、安全を確認した上で、柱の数を少なくするのもひとつの方法です。
柱が少なければ1本の柱に作用している軸力は大きくなりますから、結果として引き抜き力は小さくなります。

これは脚の数を最低限にして各脚に働く力を最大化させ、風圧による転倒力:柱の引き抜きに耐えているのです。
もし脚が6本や8本あったら、隅柱に作用する常時軸力は減ってしまい、すぐ引き抜かれてしまいます。
これは真ん中に柱があることでせっかく有効に使えるはずの軸力を、ムダに捨ててしまっていることになるからです。

エッフェル等は脚が4本ですが、簡単のため2本とすると(左図)各脚に働く力は半分ずつ、W/2です。
しかしもし、右図のように真ん中に脚があった場合、先ほどの中柱のように負担範囲が大きいですから、真ん中の脚には約W/2の力がかかり、はしっこの脚に働く重量はW/4。先ほどの半分です。
よって脚が2本の場合の半分の風圧力で端っこの柱は引き抜かれてしまいます。
中央の柱への重量:W/2がムダに捨てていることとなっているのです。
このことから、鉄塔などのタワーを計画する時、脚の数を最低限にするのはいわば鉄則です。
電線の送電塔などはたいてい4本ですよね。
力学上、立体的に安定するのに必要な脚の最低本数は3本です。
これを平面的に120度(=ベンツマークのように)配置するのが最も効果的です。

カメラの「三脚」はまさに文字通り、脚は3本ですよね。
このような3本脚構造をtripod:トライポッドと言います
(三脚の英訳もトライポッド。)
上記のように3本の時が最もムダがないですが、実際は、建物や塔は90°のX-Y軸で設計されることが多いので脚は4本となっています。
話は戻りますが、柱を減らす、抜くとなるとちょっとビビッてしまうかもしれません。
まあこの場合は構造設計者にアドバイスを頂くなどしたほうがいいかもしれません。
次回もホールダウンの数を減らすには、という点「NEを小さくするには?」を述べます。
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