ヒトが賢いのは重力のおかげ!?

だいぶ更新が滞ってしまいました。
今日も大学の授業の一部を切り取ってご紹介します。
(大学の非常勤講師(構造)をやっています)
題して。。
「ヒトが賢くなったのには重力の作用が。。!?」
・四足歩行とアタマの重さ

突然ですが右をみてください。これはウシの骨格です。
これをよく見ると、背骨の上に骨がいっぱい突き出ています。
これは何でしょうか?
これは胸椎(きょうつい)と言う骨です。
ではこれは何のためにあるのでしょうか?
その答えですが。。
胸椎の上には実際は下図の点線のように背筋が付いています。
この背筋によって、頭の重さを吊り上げているのです。
力学的に言うと、アタマの重さをせん断力=首をタテに横切る方向の力で、
カラダの方まで持ってきているのです。
これはちょうど右図の吊り橋のようなものです。
吊り橋はケーブルによって橋の重さを吊り上げています。
これと全く同じです。
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もしもアタマのいいウシが生まれたら。。。?

もし仮に、脳が大きい、アタマの良いウシが、突然変異で生まれたとします。
しかしそうすると背筋の負担が大きくてタイヘンです。背筋にとっては、アタマは大きくないほうがよいのです。
よってそのような突然変異は生物学上、歓迎されません。
そのような個体は淘汰されてしまいます。利口なウシはあまり生まれないのです。
二足歩行とアタマの重さ
今度はヒトです。

ヒトは直立二足歩行です。よってアタマはカラダの真上にあります。
アタマの重さは直接、その真下にあるカラダに伝わりますので、
背筋で吊り上げる必要がありません。
アタマが大きい、利口なヒトが生まれても、身体上、問題ないのです。
よってアタマ:脳は大きくてOK。
進化の過程でどんどん大きく、利口になりました。
軸力とせん断力
上記を整理して力学的に説明すると以下です。
ウシ:四足歩行ではアタマはカラダのヨコに飛び出ています。
アタマの重さは首を横切るような方向、せん断力としてカラダに伝わります。
せん断力は力学的には効率の悪い力の伝達です。
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ヒトはアタマがカラダの真上にあり、この重さは軸力(圧縮力)でカラダに伝わります。
軸力は非常に効率のよい力の伝達です。首に負担がほとんど掛かりません。
アタマが重くてもヘーキなのです。

これは右図を見ると分かるでしょう。
水の入ったバケツをアタマの上に乗せるのは大して苦ではありません。
しかしこれを手を伸ばして持つとなると。。ヒジョウにタイヘンです。
腕が疲れてたまりません。
このようにヒトは二足歩行することでアタマがカラダの真上に来ることとなりました。
その結果、身体的負担がなくなり、アタマ(脳)はどんどん大きくなることが出来ました。
このことより、頭部の重さと全体重の比率は、全動物中でもヒトが最大となっています。
さらに二足歩行には副産物がありました。
両手が自由になったお陰で道具を用いて手、指を使うようになり、
それが脳に刺激を与え、更に脳が発達する、という好循環になりました。
ヒト、という知能動物の誕生です。

上はよく見る進化の絵ですが、左から右に立ち上がっていくについて、アレ?立ってる方が首が楽だぞ、となったのでしょう。左端ですとウシと変わりませんからアタマが大きいと首が疲れてしまいます。
蛇足ですが冒頭の胸椎。。ヒトではほとんど必要がありません。
よってヒトの胸椎の高さはわずかとなっています。
上記はヒトやサルなどの骨格です。
左よりテナガザル、ヒト、チンパンジー、ゴリラ、オラウータンです。
右3つは首の後ろ側に胸椎が出っ張っているのが見えますが、ヒトにはそれは全くありません。スッキリしています。
人類の発展に重力:力学が起因しているとは興味深いことです
もし遠い宇宙のどこかに宇宙人がいたとしたら。。やはり彼らも二足歩行しているのではないでしょうか。 重力は宇宙のどこでも。。万物に働きますから。
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