ヘビはなぜ「とぐろ」を巻く?

トツゼンですが今日はヘビのお話です
ヘビが苦手な方はごめんなさい
ヘビのように。。。ちょっと長めのお話です

トツゼンですが。。ヘビはナゼ、とぐろを巻くのでしょうか
その理由は。。。?
ネットなどでは体温(熱)が奪われるのを防ぐためだ、などの既述もあります(コチラ)
しかしその理由。。私見ですが以下だと思います。
それは。。。
とぐろを巻かないと、鎌首をもたげられない!
これは力学の問題なのです

上図のように2点の支点があった場合、重さの中心=重心がその間にあるならば倒れません。
しかし右端のようにそれをはずれてしまえば倒れてしまいます
とぐろをまいていない下のようなヘビくんは上図の右端に相当し、倒れてしまうのです

もう少し詳しく調べます

2つの物体があった場合、それらの重心は2つの間で、重い方に寄った所となります
とぐろを巻いたヘビの場合、とぐろとアタマの間で、とぐろに寄った位置です。
もし右図のようにアタマの重さが1でとぐろの重さが2の場合、全体の重心は両者の距離をとぐろ側から1:2に分けた所です。これがとぐろのヘリをでなければ倒れないのです。
もしアタマが大きく、とぐろが小さかったら重心がとぐろのへりを超えてしまい、倒れてしまいます(左上図のように)
逆に言うと、アタマがとぐろのへりより外に出ても、全体の重心がそのへりを超えなければ大丈夫です(右上図の状態)。
とぐろが倒れへの重しとして働いているのです。
家具好きならご存知のフロアライト、ARCOアルコはこの仕組と全く同じです
まさにヘビの鎌首のようにライト部が飛び出ていますが台座が十分重いため倒れることはないのです

「鎌首ビル」とでも呼んだほうが良さそうな、北京のCCTVビルは下図、右端のヘビ君と同じ状態です。よって倒れないようにヘビ君のしっぽの先に当たる部分を杭で地面へ引き下げています。
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そして、悩ましいことに、首を繰り出して遠くへ伸ばして行けば行くほど、重しとしてのとぐろの重さは減って行きます。ヘビ君の全長は決まっているからです。よって倒れないためにはあるどこかまでしか首を伸ばせないのです
ここで、ちょっとした思考実験をやってみましょう。

上図のような、全長10m,10kg、1kg/mのヘビ君がいたとします。
本来、アタマはもう少し重いでしょうがカンタンのため上記とします。
そのヘビ君が下図のように鎌首を伸ばしたとして、どこまで行けるか考えてみます。
いくつか条件を設定することとします。
まずとぐろの幅は2mとします。中心からへりまで1mです。
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鎌首は上図のように60度の角度でもたげるとします。
もたげた首の全体の重心はその中央にあり、その位置は図のように60度の直角三角形の関係から。。。
首の長さを2とすると水平投影長さが1。重心位置は0.5。2:0.5ですから首の長さの1/4となります。
仮に首を2mもたげているとすると残りのとぐろ部は8m。この両者の重心を計算し、とぐろのへりから出ているかを比べるとなります。

ではまず2m首を出した場合で考えてみます(右図)。
首の重さは2kg.首の重心は中央から2/4=0.5m位置です。
とぐろの重さは8kg.その重心はトウゼン中央です。
2つの重心位置は以下のようになります。
首2kgでとぐろ8kg。重さは1:4.両者の重心はその距離を1:4に分けて、重いとぐろ側=中心側に寄った位置です
よって両者の距離0.5mから1:4の位置。
0.5*1/5=0.1mとなります
中心から0.1m位置。
へりまで1mですからまだ0.9mあり、全然OKです!

では思い切って半分。
5m首を出します。
首の重さは5kg。首の重心は中央から5/4=1.25mです。
とぐろの重さも5kg.その重心は中央。
重心の位置は。。今回はカンタンです
両方共5kgですから重心はその中央。1.25/2=0.625mです。
中心から0.625m位置。へりまで1mですからまだ0.375mあり、OKです。

ではもう少し。7m首を出します。
首の重さは7kg。その重心は中央から7/4=1.75m。
とぐろの重さは3kg.その重心は中央。
重心位置は両者を7:3に分けたところで、1.75×7/10=1.23mとなります。
これですと、へりまで1mですからそれを超えています。
倒れてしまいます。限界に達してしまいました。
10mのうち7mですからかなり行きました。
けどまあこれは理論上であって、実際は鎌首をもたげた分、首に負担=片持ちモーメントが掛かってしまいますから、こんなにはムリでしょう(下図)。
倒れる前に。。首がキツいから止める、となります。
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(上図の説明
M CG:鎌首をもたげたことによる片持ちモーメント(重力が首を下へ曲げる力)
d:胸椎の高さ
T: M CGによる背筋に掛かる引張力。
C: M CGによる背骨に掛かる圧縮力。 T=C=M CG /d
胸椎(きょうつい)とは背骨の、背中側の飛び出しの骨。その上に背筋が付く)
胸椎の様子がよく分かる写真↓
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(胸椎、背筋による片持ちモーメントの負担についてはコチラの投稿(ウシの首の重さの負担)もご覧ください)
ダイブ長いお話になって来ました。
話は戻りますが、ネットによると、とぐろを巻く理由は熱を逃さないため、360°見渡すためなどとあり、ここに上げた理由を扱っているところは見当たりませんでした。
この考えは全くの私のオリジナルですが、間違ってはいないと思います
工事現場で働くタワークレーンは転倒しないように揚重物の重さに応じて腕を伸ばせる限界範囲がありますが、ヘビ君の方も、空間的に「これより先には首を伸ばせない」という限界=到達限界があるのでしょう(下図)
ヘビ君から考えれば到達限界ですが、外の、我々などから考えれば安全限界です。
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いかに猛毒のコブラが鎌首もたげて「シャーッ!噛み付いたろかコラ」と関西弁で脅しをかけてきたとしても。。この安全限界の外にいれば、噛みつかれることはないのです。
「ホ~ラ。悔しかったらここまで首伸ばしてみろ~(°▽°)」と挑発されても。。コブラ君、なす術がないのです。
もしかしたら挑発されて、もたげたアタマのてっぺんまで血が登ったコブラくんは。。
「人をナメやがって。ワイの長~い胴体で本家本元、コブラツイストで締め上げたろか~~~?
ボケェ!ヽ(`Д´#)ノ 」
。。と倒れるの覚悟で飛びかかって来るかもしれませんが(^^;)。。。。
その場合は当方は免責とさせていただきます。
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15年ほど前ですが、ヘビについてnetで詳しく勉強したことがあります。今回の掲載もその一部ですが、その研究の成果は素晴らしい物でした。
その時に学んだ点をもう一つだけ挙げると。。。
「ヘビは長い胴体を波型(サインカーブ)にのたうたせて、腹を地面に押し付けることで前進する」
その仕組を説明すると。。

上左図で、体をサインカーブに横たえ、ウネウネと横方向(上図赤矢印)に動かします。そしてそれを後ろへ送ります(青矢印)。
このとき胴体の一部を拡大すると(中図)、まず胴体をヨコ(H方向)に地面の土などに押し付けます。
HはR1とR2に分解できますが、R1は土への押し付け力(反力)となるのに対し、R2:ヘビの胴体方向については、ヘビ君のお腹はヌメヌメしていて引っ掛かりが無いですから、スルッと滑ってしまいます。
つまり胴体が前に進むというワケです。胴体をヨコ方向、H方向に体をウネウネしているだけで前に進むのです。
この仕組を力学的に書くと上右図です。ローラー支点のようなもので、Hの力がR1の土への反力と、斜め上方向への移動力となるのです
このように、ヘビ君は自分の長い胴体を巧みに利用することで前進するため、足なんて全く不要。付け足す必要はなく、まさにヘビ君に足は蛇足!なのです
これらの勉強の結果、思ったのは。。やはりツチノコはいない!
・短い胴体ではサインカーブを描けず、前進できない
・「ツチノコが鎌首あげてたんだ~」などという村人の目撃証言があったりしますが、ツチノコがそれをやると下図。コテッと倒れてしまいます。そんなのありえないのです。
左下は偶然にもつい最近、NHKで放送されたツチノコ特集からの画像ですが、本物かとばかりにリアルに再現されたこのCG。。残念ながらこのように立つことは出来ず、絵(CG)の中だけの世界、絵に書いた餅なのです
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下記は上記を勉強した時に拝見したサイトです
東工大広瀬茂男氏東工大は既に退官された模様
ヘビ型ロボット(PDF。著者失念してしまいました。おそらく広瀬氏)
最後に。。。反論回避のため、若干補足して付け足します。
ヘビ君が鎌首をもたげる場合、下図のようにとぐろを巻かないとしても、下図の、鎌首と、それより後ろの2つの全体の重心が、接地部の最前端:へりを出ていなければ倒れません。
カンタンに言うと、後ろが重ければ、ということです。
これよりとぐろを巻くことで鎌首をもたげられる、と言うのは十分条件で、必要条件ではないかもしれません。
ちょっと歯切れの悪い文章の終わり方となりました。この補足、蛇足だったかな。
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今回の記事も大学の授業の一部です。
(建築の構造、力学についての非常勤講師をやっております)
楽しみながら学べる、edutainmentエデュテインメント(education教育 + entertainment娯楽)を目指しています。
その方が記憶への定着率も高いものです。
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テーマ : 博物学・自然・生き物
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